遠くを聴く[グループ展] : 遠くを聴くための装置_1
作品01
遠くを聴く[グループ展]
会期:2009.11.10〜11.15
@コンチネンタルギャラリー(札幌市中央区南1条西11丁目B1F)
石黒翔、神谷泰史、中里麻沙子、山岸せいじ、山岸みつこ、山里稔、吉成翔子


作品解説 : 遠くを聴くための装置_1

■作品の説明
本作品は、いろんな時点での「遠く」の音を聴く作品です。
作品から聴こえる音は、今現在の音かもしれないし、1秒前の音かもしれないし、 1分前、1日前の音かもしれません。
そんな、いろんな時点での「遠く」の音が、文脈を変え、「ここ」の音として再構築されるのです。

■「遠くを聴く」とは?
「遠く」とは何だろうか?
辞書で「遠く」を引いてみる。
「距離が遠いさま。隔たりが大きいさま」
とある。
では、「距離」とは何か?
「2つの物・場所などの空間的な離れ方の大きさ。へだたり。」
とある。
一方で、英語で「遠く」を調べてみる。
すると、項目の中に、「far(時間的に)」とある。
ここまできて、なるほど、と思うことがある。小学校で習う、距離=速さ×時間である。
一定の速さで進むということが前提であれば、距離は時間と等価なのだ。
そういえば、良く耳にする距離の単位として、「光年」がある。
空間距離が把握しきれないような、惑星の間の距離を表したりするのに使う単位で、
光が進む速さで1年間に進む距離が1光年である。時間で「遠く」を表現しているのだ。
はるか宇宙の「遠くを見る」ということは、過去の光を見ている事になるのだ。
ところで、もっと身近に、進む速さがほぼ一定のものがある。
それは「音」である。
さすがに、「音年」という距離の単位はなさそうだが、光と同じメタファーで考えるならば、
「遠くの音を聴く」ということは、過去の音を聴くということである。

■システム概要説明
本作品は、3つのスピーカー、3つのマイク、3つの記憶を持っています。
ちょうど3人の人がいると考えてください。その3人の人の周りに我々がいます。
3人は周りにいる我々の話す言葉、発する音、建物の音など、周囲の様々な音を断片的に聴いています。
その3人の記憶する音の断片は、それぞれ違います。
そして3人は、我々が出した音を再現することで会話をします。
ある人は10秒前の音を、ある人は1分前の音を再現して、他の人はその再現された音を聴きます。
再現された音を聴く人は、他の人の話すことを周りにいる我々の発する音と同じように記憶し、
それをまた再現して会話をします。さらにそれを聴く人がその音を記憶して。。。
と、繰り返していきます。
音はどんどん断片化され、音の意味は元々のものとは違うものに変わっていきます。
まるで昔話が代々語り継がれるかのように、過去の音が未来へと伝搬していくわけです。
当然、人によって語り継がれるわけなので、昔話と同じように尾ひれが付いて未来に伝わっていきます。
周りにいる我々からすれば「遠く(過去)」の音を聴く事になりますが、
彼らにしてみれば「遠く(過去)」の音を「遠く(未来)」へ伝えているのかもしれません。

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